著者のコラム一覧
田尻一郎元ソフトバンクホークス広報

1967年、福岡県出身。86年ドラフト外で南海ホークスに入団。88年に引退し、98年まで打撃投手。その後は、一軍と二軍のマネジャー、広報などを歴任した。2023年オフに退団。一軍出場なし。

《甲斐拓也の巻》「人は人、自分は自分」の言葉を胸に刻んで這い上がった苦労人

公開日: 更新日:

甲斐拓也

 ソフトバンクのキャンプは一軍に相当するA組と二軍相当のB組に分かれており、同じ敷地内で行っています。ある年のキャンプ中、たまたまB組のグラウンドに目を向けると、捕手が練習をしていた。

 その中のひとりの動作に目を奪われました。捕球してから投げるまでの動作がとんでもなく速い。でも、ボールを芯で捕れないのでうまく握ることができず、いい送球が行かない。二軍スタッフに「ええやん。これでちゃんとボール握れるようになったら凄くね? あいつ名前何?」と聞くと、それがまだ一軍デビュー前の甲斐拓也(31)だったんです。

 僕は当時一軍広報だったので、育成選手だった甲斐とはほとんど接したことがなかった。光るものはありましたが、まさか球界を代表する捕手になるとは、当時の僕に言っても信じたかどうか。

 甲斐を捕手として大きく育てたのが2017、18年にヘッドコーチを務めた達川光男さんであることはよく知られています。僕はもうひとり、そこにホークスで一軍二軍問わずコーチを歴任した、捕手出身の森浩之さんも挙げたい。甲斐は以前、一番心に残っている言葉は何かと聞かれた時、「森さんに言われた『人は人、自分は自分』です」と話していました。甲斐は10年育成ドラフト6位。同じ年のドラ1は山下斐紹でした。2人とも捕手で、片やドラ1、片や育成選手。どうしても甲斐が山下と自分を比べてしまうのは無理もありません。そんな時、森さんが「他人と比較せず、自分を高めなさい」という意味でかけた言葉でした。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…