「それでも「美談」になる高校サッカーの非常識」加部究
――全国高校サッカー選手権の季節が訪れましたが、過激なタイトルの本です。
「Jリーグの誕生で指導者養成にライセンス制度を採用するなどサッカー界は他スポーツよりも進んでいる印象がありますが、名門校ほど旧態依然とした体質が残っている場合が多くあります」
――問題はどこに?
「精神面の鍛錬と言って長時間のランニングや筋トレを課します。生徒の発育を阻害し、深刻なケガを招きかねません。OBや上級生らによる体罰やしごきが、伝統として残っている例も多い」
――Jクラブでそういう話は聞きません。なぜ高校のサッカー部には残っているのでしょうか?
「ひとつは指導者の勉強不足が挙げられます。しかし、密室のような状況の下、生徒は先生に逆らえないし、結果を出して“名将”になれば、誰も意見のできないアンタッチャブルな存在になる」
――本書では、サッカー界に新風を送っている学校も紹介しています。
「たとえば広島県立広島観音高校の畑喜美夫先生は、練習メニューから試合のスタメンまで主将を中心に生徒たちにすべて決めさせています。これは彼らの主体性を引き出すためです。ちなみに練習は週に2日です」