『子は親を救うために「心の病」になる』高橋和巳著
長年にわたって心を病む子どもを診察してきた精神科医の著者は、問題を抱える子どもの親は、親自身が心に問題を抱えているケースが多く、子どもの病によって親こそが救われると説いている。
両親の仲が悪く母親が苦労している家庭の場合、子どもは常に母親の心配をし、我慢ばかりの生き方を引き継ぐ。そして、思春期に入ると子どもは新しい世界へ進みたい気持ちと、母親のために我慢すべきだという気持ちがぶつかり合い、自分を責め、親を恨み、心を病んで引きこもりや拒食症に陥る。
しかしこの危機こそが、親が自分の人生と心の矛盾を解決する時だと本書。さまざまな親子のケースを挙げながら、親が子に救われ、子どもが立ち直るプロセスを明らかにしていく。
(筑摩書房 780円)