「甘いお菓子は食べません」田中兆子氏
■「男に近づいている40代女性を描きました」
女性向きの官能小説を対象とする「第10回R―18文学賞」大賞を受賞した著者のデビュー作で、6作の連作短編集。40代の女性たちを主人公に、婚約者、夫、セックスフレンド、ゆきずりの相手ら男たちとの関係が描かれた物語だ。
「登場する女性たちはお酒は飲んでもお菓子は食べないので、このタイトルになったのですが、最初に私が出したタイトル案は『私たちは男に近づいている』。仕事のできる男性が、自分を鼓舞するためにきれいな奥さんと結婚したり、若い女性をはべらせたりするじゃないですか。女性もそれと同じところまできてますよ、という世界を描きたかったんです」
2編目に収録の「花車」は、大学生と高校生の子供のいる、売れっ子ビーズ作家の妻・武子と売れない日本画家の夫・宗太郎の物語。宗太郎は旧来の女らしさ、母らしさを妻に押し付けないタイプで、2人は仲がいい。ある夜、体を求めた武子に、宗太郎は「『おつとめ』は引退したい」と古めかしい言葉で拒否する。
「近ごろ週刊誌は『死ぬまでセックス』とかって書き立てていますが、淡泊な男だって多いと思う。武子は宗太郎に『セックスを嫌いになったのは性質で、あなたのことは好きだ。他の人とやっていいよ』とも言われます。武子は重い気持ちを吹っ切ろうと、中高年向けのセックス相手紹介所に登録するんですが、したくない男もしたい女も、アリだと思うんですね」