利き酒師・酒ジャーナリスト山同敦子氏に聞く
「戦後、米が不足していた頃にアルコールを添加し、味をごまかすために水あめなどの糖分や酸味料で味付けした日本酒が造られました。温度管理も悪いので味も劣化し、お燗をするとツンとする、後味はベタベタと甘ったるい……これが日本酒のイメージになってしまったのです」
■バナナやたくあんの香りがする“変わり種”も
そこで「辛口」を打ち出す銘柄が現れ、1970年ごろにはアルコール添加をしない純米酒、80年代後半になると米を磨く吟醸酒ブームが起きた。
「こういう歴史のなかで、甘口=×、辛口=○、通は辛口を好むという価値観ができてしまいました。でもね、甘くておいしい日本酒もたくさんあるし、香りもいろいろです。バナナやリンゴなどの果物、ヨーグルトやチーズ、たくあんやゆでた大根、はちみつやチョコレートの香りがする日本酒もあるんですよ」
たとえば栃木県の「大那(だいな)」は透明感があってスッキリ。宮城県の「萩の鶴」はより複雑な味わい。愛媛の「石鎚(いしづち)」はとろりと滑らかで魚に合いそう。
好きな酒に出合えるコツは「記憶より記録」なんだそうだ。