学校のグラウンドでは子どもたちの運動会だけではなく、島あげての祭典となる炭鉱の運動会も行われた。学校の倉庫には運動会の看板や景品がそのまま丁寧にしまわれていた。
その他、柱と天井だけになった映画館、石炭を運搬船に運ぶベルトコンベヤーの支柱、1916(大正5)年に建てられた日本最古の鉄筋アパートなどの遺構にも目を向け、島の記憶に著者自身の思い出を重ねながら、つづっていく。
明治から昭和まで日本のエネルギーを支え、近代化に貢献した軍艦島。廃墟と化した島を撮影した白黒写真から、消えゆく歴史や人々の暮らしが立ち上ってくる。
(亜紀書房 1600円)