「ブルース」桜木紫乃氏
ページが進むに従い、物語は昭和40年代から平成へ、博人は6本目の指という“過剰”を切り落とし、普通の見た目を手に入れ裏社会を駆け上がっていく。
そこには著者の「生まれながらに備わったもので無駄なものなどあるのか」という問いかけが込められている。
博人にとっての過剰、そして欠落は何だったのか。指や女たちから求められる過剰か。出自や自分は愛さない欠落か――。
「この作品でいい男を追求してみたわけですが、結局は、男はかっこ悪くてもいい、ただ、生きていてくれたらいいという結論に達しました。父、夫、息子をそばで見てきて男がいかに弱い生き物か分かりますから(笑い)。一人で強く生きようとして早死にするくらいなら、かっこ悪くていい。世の女性たちは、そう思ってるんですよ」
壇蜜も「一人の女として読み抱かれた」と絶賛の、釧路ノワール連作集。(文藝春秋 1400円+税)
▽さくらぎ・しの 1965年、北海道釧路市生まれ。13年「ホテルローヤル」で直木賞受賞。2月21日から「硝子の葦」を原作とした「連続ドラマ 硝子の葦」がWOWOWでスタート。また今秋には「起終点駅 ターミナル」が原作の映画も公開される。