「ブルース」桜木紫乃氏

公開日: 更新日:

 ページが進むに従い、物語は昭和40年代から平成へ、博人は6本目の指という“過剰”を切り落とし、普通の見た目を手に入れ裏社会を駆け上がっていく。

 そこには著者の「生まれながらに備わったもので無駄なものなどあるのか」という問いかけが込められている。

 博人にとっての過剰、そして欠落は何だったのか。指や女たちから求められる過剰か。出自や自分は愛さない欠落か――。

「この作品でいい男を追求してみたわけですが、結局は、男はかっこ悪くてもいい、ただ、生きていてくれたらいいという結論に達しました。父、夫、息子をそばで見てきて男がいかに弱い生き物か分かりますから(笑い)。一人で強く生きようとして早死にするくらいなら、かっこ悪くていい。世の女性たちは、そう思ってるんですよ」

 壇蜜も「一人の女として読み抱かれた」と絶賛の、釧路ノワール連作集。(文藝春秋 1400円+税)

▽さくらぎ・しの 1965年、北海道釧路市生まれ。13年「ホテルローヤル」で直木賞受賞。2月21日から「硝子の葦」を原作とした「連続ドラマ 硝子の葦」がWOWOWでスタート。また今秋には「起終点駅 ターミナル」が原作の映画も公開される。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    「かなり時代錯誤な」と発言したフジ渡辺和洋アナに「どの口が!」の声 コンパニオンと職場で“ゲス不倫”の過去

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    「よしもと中堅芸人」がオンカジ書類送検で大量離脱…“一番もったいない”と関係者が嘆く芸人は?

  1. 6

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 7

    入場まで2時間待ち!大阪万博テストランを視察した地元市議が惨状訴える…協会はメディア取材認めず

  3. 8

    米国で国産米が5キロ3000円で売られているナゾ…備蓄米放出後も店頭在庫は枯渇状態なのに

  4. 9

    うつ病で参議員を3カ月で辞職…水道橋博士さんが語るノンビリ銭湯生活と政治への関心

  5. 10

    巨人本拠地3連敗の裏に「頭脳流出」…投手陣が不安視していた開幕前からの懸念が現実に