昭和13年、瀬田修司は、横浜のキングと呼ばれた大実業家、原三溪の情報を集めていた。三溪の醜聞をつかみ、それを取引材料にして自分のビジネスに出資させようとしたのだ。
関東大震災でたった一人の家族だった妹を失い、港で荷役作業をしていた修司は、中国で麻薬の取引をしていた人物に拾われ、青年実業家となって横浜に戻ってきた。やがて、電力王、松永安左エ門の計らいで、三溪との面会が実現する。茶室で対峙した三溪は修司に「他の誰でもなく、己の王になりなさい」と諭す。実は修司はかつて三溪と出会ったことがあった。
横濱王と呼ばれた男をモデルに繰り広げられる長編小説。(小学館 1500円+税)