肩から力が抜けたアナキズム研究者

公開日: 更新日:

「現代暴力論『あばれる力』を取り戻す」栗原康著

 アナキスト・大杉栄を研究する著者による書である。原発や国家、警察権力といったものが個人を征服し、我々はそこに隷属している、と述べる。税金を逃れることはできないし、警察官から職務質問を受けた場合に逃げようとすると「何かやましいことがあるのですか?」と言われ、周囲からも不審者扱いされてしまう。こうした暴力装置の前に個人など無力であることを嘆き、社会の風潮が個を抑圧することも語る。そして、その状態に対して疑問を抱くことが真っ当であるといった主張をする(と読み解ける)。オレたちは隷属的でなくてもいい! さぁ、立ち上がるぞ!不当な支配から脱却だ! 求む!

 現代のジャンヌ・ダルク! と、学生運動を経験したオッサンなんかはここまで読むと一瞬そう感じるかもしれないが、まったく違う。

 本書は真面目に暴力や国家権力、自由恋愛の是非に原発などを論じてはいるものの、別の側面が随所に感じられる。それは、ひらがなの多さと、あまりにも自虐的な文体に表れている。ここから感じられるのは太宰治的な「生れて、すみません」論法である。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  2. 2

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  3. 3

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  4. 4

    大阪万博「遠足」堺市の小・中学校8割が辞退の衝撃…無料招待でも安全への懸念広がる

  5. 5

    「クスリのアオキ」は売上高の5割がフード…新規出店に加え地場スーパーのM&Aで規模拡大

  1. 6

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  2. 7

    「ダウンタウンDX」終了で消えゆく松本軍団…FUJIWARA藤本敏史は炎上中で"ガヤ芸人"の今後は

  3. 8

    189cmの阿部寛「キャスター」が好発進 日本も男女高身長俳優がドラマを席巻する時代に

  4. 9

    PL学園の選手はなぜ胸に手を当て、なんとつぶやいていたのか…強力打線と強靭メンタルの秘密

  5. 10

    悪質犯罪で逮捕!大商大・冨山監督の素性と大学球界の闇…中古車販売、犬のブリーダー、一口馬主