肩から力が抜けたアナキズム研究者

公開日: 更新日:

 非常勤大学講師をしている政治学者の著者は173センチ、52キロで自分のことを弱いと考え、さらに年収も100万円以下だと述べている。さらには、20代後半の女性を口説いたら激怒されたと書き、モテないことを嘆いている。

〈よりによってわたしのようなクズというか、かせごうともしない人間から好きだといわれたわけである。おそらく、そういうふうにクズから口説けるとおもわれてしまったこと自体が、かの女にとっては屈辱だったのだろう。そりゃあ自尊心も損ねてしまう〉

 とにかくどこか力が抜け、デモに参加したといってもあくまでも好奇心や研究心から参加した、という解説を加える。これは、60年安保に参加した往年の闘士が、昨今の国会前デモがフェスかのような平和的様相を呈していることに肩透かしを食らうのと同じことだろう。アナキズム研究をしているものの、自らの主張はそれほどせず、主張自体は大杉らの著書からの引用を行い、解説を加えていくスタイルを取り、自身のマッチョな主張はない。

 その点が若干まどろっこしい部分はあるものの、決して今の世界が自由にあふれているものばかりではない点、恋愛でさえ暴力であるといった点の指摘は新たな視点を与えてくれるだろう。★★(選者・中川淳一郎)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が