【最新国際情勢】複雑化する国際情勢の中で日本はどう生き残るべきか。中・米・露を相手に考える。
「中国人とアメリカ人」遠藤滋著
大手商社マンとして米国留学・駐在を長年経験し、その後は台湾勤務に駐中国総代表として香港から東南アジアまでを相手にしてきた著者。その人が「中国人とアメリカ人は似ている」と喝破する。
広大な国土に多様な人々。地方によっても常識から発想法までが大きく異なる。アメリカでは「東部は頭で、中西部は人柄で、南部は腹で勝負する」という。中国も一つの「国」ではなく多様な中国人が住む「大地」だというのが実感。だが、ともに「自己中心主義」の点は同じ。かたや中華思想、かたやアメリカ例外主義に凝り固まって、日本はそのはざまで翻弄される。
変化の仕方も日欧は段階的だが、米中は大変革が常道。アメリカはオープンでアバウト、中国はバランス感覚にすぐれて老獪という違いはあるが、結局どちらも大国なのだ。それゆえ誇り高い点も同じ。気さくな国柄といっても直接的な物言いが適切かといえばさにあらず。論争になったら、まず相手の顔を立ててから論理的に反論するのが肝心。「自己主張のビジネス術」という副題どおりの対中・対米文化論だ。(文藝春秋 780円+税)