「十字架の王女 特殊捜査班カルテット3」大沢在昌氏
カルテット、つまりもうひとり主要人物がいる。車椅子の警視正・クチナワだ。特殊捜査を命ずるが、チームは誰一人として彼を信用していない。
「若者は大人に頼っちゃったりするからね。頼っちゃダメなんだよ。信用できない腹黒い大人相手に、彼らが成長できる物語として完結編に持っていったつもりです。今の若い人でこんなにエネルギーあるヤツいるかと思うけれど、2割くらいは熱いヤツもいるんです。熱いヤツと会うとなんだかホッとしません?」
ただし、若者の友情と成長物語だけでは終わらない。完結編には、ある「密約」を巡る壮絶な争いが描かれている。巨悪絡みの大団円は大沢作品の本領発揮、アクション映画のような迫力がある。
「密約に関しては史実に多少近いものがあるんですよね。それをヒントに、現代日本を取り巻く社会情勢を絡めて、でっちあげてみました(笑い)」
シリーズ初作「渋谷デッドエンド」(「生贄のマチ」に改題)から張られていた伏線も、カスミが抱える謎も、本作で納得の結末へと導かれていく。