「ミレニアム4(上・下)」ダヴィド・ラーゲルクランツ著 ヘレンハルメ美穂、羽根由訳
「ミレニアム」1~3部の素晴らしさについては今さら言うまでもない。第1部が孤島ミステリー&サイコ・スリラーで、第2部が警察小説&復讐小説で、第3部がスパイ小説&リーガル・サスペンスというミステリーの全要素が詰まった小説で、その面白さも緊迫度も文句のつけようのない傑作であった。
我が国でもこの作品をきっかけに、北欧ミステリーが次々に翻訳されるようになったが、これは日本だけのことではなく、この「ミレニアム」シンドロームは世界に波及して、全世界で8000万部売れたという。地球規模で始まった北欧ミステリーブームの火付け役が「ミレニアム」であったのである。
残念なのは、作者のスティーグ・ラーソンが刊行前に50歳の若さで病没してしまったことで、作品が素晴らしかっただけに続きを読めないのは残念だった。そう嘆いていた読者が多かったと思うが、そういうときに本書が出てきたからうれしい。007も作者の死後に他の作家が書き継いでいるが、この「ミレニアム」も版権を管理している遺族の依頼を受けて新作が登場というわけだ。
結論から先に書けば、なかなか面白い。主人公のミカエルも、あの魅力的なヒロインのリスベットもいきいきと物語のなかを動き回り、まるでスティーグ・ラーソンが書いたかのようだ。内容は人工知能の研究をめぐる話であると書くにとどめておく。ハリウッドで映画化も決定したスリラーの傑作である。(早川書房 各1500円+税)