「ひとり居の記」川本三郎著
8年前に妻を亡くし、悲しみと寂しさにようやく慣れてきたという著者が、初老の一人暮らしの日常をつづったエッセー。
一人暮らしになって一番寂しいのは猫を飼えないことだという。旅や街歩きで家を空けることが多いからだ。その寂しさを紛らわすために部屋に飾っている猫の写真を撮影した写真家の岩合光昭さんの写真展を見に福島県のいわき市に出かける。いわきから常磐線で水戸まで戻り、JR九州の車両デザインで知られる水戸岡鋭治氏の仕事を紹介する展覧会へ。さらに水戸からローカル私鉄鹿島臨海鉄道大洗鹿島線に乗り大洗へ。惨劇を忘れぬよう東北を中心に出かけては街を歩き、その風景や折々に読んだ本、そして去来する思いを記す。(平凡社 1600円+税)