脱原発は不可能か? 国民を守れない日本を支配している構造
「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか」矢部宏治著
史上最悪の原発事故となった3・11福島第1原発事故。すぐにドイツやイタリアは原発廃止を打ち出したのに、当の日本は再稼働を急いだ。なぜやめられないのか? そんな単純な問いへの答えさえ出せない日本とは何なのか。元広告マンで小出版社をいとなむ著者はその答えの糸口を3.11前の沖縄取材旅行でつかんだという。
広大な米軍基地のある沖縄では米軍住宅地の上だけ軍用機の訓練がおこなわれない。それは米軍の陰謀というより「住宅地上空では訓練しない」という米国の法規に従っているため。しかし地元の日本人住宅地では日本政府が止めない限り、米軍は訓練を控える理由がないのだ。要は日本政府が国民を守っていないのである。
同じ構造が原発問題にもある。米国から日本への核燃料の調達や再処理、資機材・技術の導入などを取り決めた1988年以来の日米原子力協定は条約の大半が米の同意なしに独自に政策を変えられないと決めているのだ。著者はこの構造が、戦前の天皇崇拝を温存する「天皇+米国」支配なのだと看破する。
原発をユニークな社会思想論として考察する試み。(集英社インターナショナル 1200円+税)