「黒い本」オルハン・パムク著、鈴木麻矢訳
イスタンブールの弁護士ガーリップが帰宅すると、風邪で寝ていたはずの妻・リュヤーがいない。妻が残した手紙は彼女の異母兄・ジェラールがコラム執筆に使うものと同じ緑色のボールペンで書かれていた。ジェラールに電話すると仕事場にくるように言われたが、彼は不在。編集室で尋ねてみると、彼はもう10日も原稿を送ってこないという。コラムで街に関わる逸話を書いているので、そういう街のどこかの隠れ家で息も絶え絶えになっているのではないか。2人が一緒にいると考えたガーリップは妻を捜して街をさまよう。
コラムに描かれた街の奇妙な逸話と個人の歴史が交錯する迷宮のようなミステリー。
(藤原書店 3600円+税)