著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「大正十五年のヒコーキ野郎」長島要一著

公開日: 更新日:

 リンドバーグがプロペラ機でニューヨークからパリへ飛び、大西洋単独無着陸飛行を達成したのは1927(昭和2)年だが、その前年、ヨーロッパと東京を往復飛行したデンマーク人がいた。本書は、その空の冒険行を描くノンフィクションだ。

 当時の飛行は、山とか川とか、海岸線、鉄道線などを目視し、地図と対照しながら常に低空を飛ぶのが普通だったが、そうすると間違った方向に進むこともあったという。さらにガソリンタンクが漏れていたりすると、途中で不時着して修理しなければならなくなったりする。そういうアクシデントの連続である。デンマークのボトヴェ大尉は、機関士オルセンとともに旅立つが、出発時は僚機も一緒だったものの、僚機は途中で故障のために飛行継続を断念。結局はボトヴェ大尉たち単独の飛行となる。

 途中何度も着陸しながら東京を目指すのだが、上海に向かう途中不時着したときの挿話がケッサク。近くの村で一晩を明かして飛行機のところに戻ると、指でネジを回して外せる物はことごとく持ち去られていたというのだ。着陸のたびに地上で1日か数日過ごすので、そのときに撮ったと思われる写真が何枚も挿入されていて、世界各地の当時の風物が浮かんでくるのも興味が尽きない。

 東京に着陸後は日本各地で大歓迎を受けたらしいが、本書は日本とデンマークの友好の歴史を描く一冊でもある。(原書房 2800円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    下半身醜聞の西武・源田壮亮“ウラの顔”を球団OBが暴露 《普通に合コンもしていたし、遠征先では…》

  2. 2

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  3. 3

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  4. 4

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  5. 5

    「二刀流」大谷翔平と「記録」にこだわったイチロー…天才2人の決定的な差異

  1. 6

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  2. 7

    元横綱・白鵬に「伊勢ケ浜部屋移籍案」急浮上で心配な横綱・照ノ富士との壮絶因縁

  3. 8

    いまだ雲隠れ中居正広を待つ違約金地獄…スポンサーとTV局からの請求「10億円以上は確実」の衝撃

  4. 9

    キムタクがガーシーの“アテンド美女”に手を付けなかったワケ…犬の散歩が日課で不倫とは無縁の日々

  5. 10

    悠仁さま「渋渋→東大」プランはなぜ消えた? 中学受験前に起きた小室圭さん問題の影響も