「大正十五年のヒコーキ野郎」長島要一著
リンドバーグがプロペラ機でニューヨークからパリへ飛び、大西洋単独無着陸飛行を達成したのは1927(昭和2)年だが、その前年、ヨーロッパと東京を往復飛行したデンマーク人がいた。本書は、その空の冒険行を描くノンフィクションだ。
当時の飛行は、山とか川とか、海岸線、鉄道線などを目視し、地図と対照しながら常に低空を飛ぶのが普通だったが、そうすると間違った方向に進むこともあったという。さらにガソリンタンクが漏れていたりすると、途中で不時着して修理しなければならなくなったりする。そういうアクシデントの連続である。デンマークのボトヴェ大尉は、機関士オルセンとともに旅立つが、出発時は僚機も一緒だったものの、僚機は途中で故障のために飛行継続を断念。結局はボトヴェ大尉たち単独の飛行となる。
途中何度も着陸しながら東京を目指すのだが、上海に向かう途中不時着したときの挿話がケッサク。近くの村で一晩を明かして飛行機のところに戻ると、指でネジを回して外せる物はことごとく持ち去られていたというのだ。着陸のたびに地上で1日か数日過ごすので、そのときに撮ったと思われる写真が何枚も挿入されていて、世界各地の当時の風物が浮かんでくるのも興味が尽きない。
東京に着陸後は日本各地で大歓迎を受けたらしいが、本書は日本とデンマークの友好の歴史を描く一冊でもある。(原書房 2800円+税)