失われたビザンツ図書をめぐるサスペンス
「黄金の図書館を探せ」ゲイル・リンズ著 斉賀拓真訳/オークラ出版 1100円+税
【話題】紀元4世紀、ローマ皇帝コンスタンティヌスが首都ビザンティウムに建設した図書館は質量ともに世界有数のものとして名を馳せていた。しかし15世紀半ば、東ローマ帝国の崩壊に伴い、その蔵書の一部はイワン雷帝治下のロシアに持ち込まれ、クレムリンの地下の保管庫に収められた。だが、イワンの死によってその蔵書は行方知れずとなり、以後、失われたビザンツ図書として語り継がれてきた。本書は、その幻の図書館をめぐり秘密組織と諜報機関が暗躍するサスペンス小説だ。
【あらすじ】CIAの特殊任務チームのタッカー・アンダーセンは、かつての同僚ジョナサン・ライダーからイスラム系テロの情報を得る。そのカギを握るのは「黄金の図書館」だと話したところで、ジョナサンは狙撃されてしまう。
ジョナサンの息子で元陸軍の諜報部員ジャドは、タッカーに協力を申し出る。黄金の図書館の権威である夫を殺したとして服役中のエヴァ・ブレイクは、タッカーの手で出獄を許され、ジャドの手助けをすることに。黄金の図書館とは、幻のビザンツ図書を蔵書する図書館で、世界的な大企業の幹部らが運営する秘密組織だった。
この蔵書から莫大な利益を得ようとする彼らは、タッカーらの動きを知り妨害に乗りだす。図書館の正体を追ってヨーロッパを駆け回るジャドとエヴァと、それをなんとかして阻止しようとする秘密組織とが丁々発止の戦いを繰り広げていく……。
【読みどころ】このビザンツ図書は徳川の埋蔵金のようなもので、現在でも一山当てようとする探検家たちの格好のターゲットとなっているらしい。著者によれば、もし発見されたら、消失したはずのサッフォーやアイスキュロスなど貴重な著作が出てくるかもしれないとのこと。〈石〉