「東芝解体 電機メーカーが消える日」大西康之氏
しかし、シャープの2016年3月期の連結売上高が2兆4615億円であったのに対し、鴻海の2015年の売上高はおよそ16兆円。数字を見れば、極めて順当な買収だったことが分かる。
「三洋電機の白物家電が中国のハイアールに、NECのパソコンが中国のレノボにと、日本の名門企業が次々とアジアの新興企業の手に落ちています。この惨状に至る背景には、実は明確かつ根本的な理由があります。これらの事業が各社にとって、絶対に負けられない“本業”ではなかったからなんですね」
日本の電機メーカーは、東電に代表される〈電力ファミリー〉と、NTTを頂点とする〈電電ファミリー〉に分類できる。つまり、電力インフラと通信インフラの下請けが“本業”として成り立ち、国民が支払う高い電気代や電話代が、設備投資という名の栄養剤として各社に注がれてきた歴史がある。
「国や公共事業に頼りきりで、半導体や白物家電、パソコンなどの“副業”が不振でも、たいした問題とは感じなかったのでしょう。こんな体質で、国際競争にさらされたときに戦えるはずがない。電力や通信の自由化で“親からの仕送り”がなくなっても自立できなかったのが、今の電機メーカー各社の現状というわけです」