著者のコラム一覧
飯田哲也環境エネルギー政策研究所所長

環境エネルギー政策研究所所長。1959年、山口県生まれ。京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻。脱原発を訴え全国で運動を展開中。「エネルギー進化論」ほか著書多数。

8年以内に化石燃料車は世界中で一台も売れなくなる

公開日: 更新日:

「スマホでサンマが焼ける日」江田健二著 good・book 1375円+税

 ギョッとするタイトルだが、目次を見るとエネルギーの未来像を描いた本だと分かる。電気のデジタル化、スマートメーター、分散化、オフグリッド、電気自動車(EV)、IoTなどなど。

 従来、こうしたジャンルは専門家かオタクだけの関心事だったが、太陽光発電が普通の投資商品としてネットで購入でき、1年前に電力小売りが全面的に自由化されるなど、日本でも急速に身近になってきつつある。その電気の世界がどこに向かうかを知るには、手頃な本だろう。

 世界の変化は激しい。高い・不安定・主力にならないといわれてきた太陽光発電と風力発電は、今や最も安い電源となり世界中が太陽光・風力に邁進しており、一昨年には風力が世界中の原発設備容量を超え、今年末には太陽光も原発を超える。

 自動車分野では、ボルボが数年内にすべてのEV化を発表、英国やフランスも2040年までに化石燃料車の全面廃止を決定、グーグルが自動運転革命をリードし、ソフトバンクはライドシェア最大手Uber出資を噂される中、自動車業界のiPhoneに例えられるテスラが世界戦略車モデル3の発売を開始した。トヨタとマツダが慌てて提携を発表したが、ガラケー連合ならぬ「ガラカー連合」(ガラパゴスカー)と揶揄される始末。スタンフォード大学は8年以内に世界中で化石燃料車が一台も売れなくなると予測している。

 巨大エネルギー産業、自動車産業、石油産業が死のスパイラルに入り、テスラやグーグルなど新しい役者に取って代わろうとしている。東芝の苦境も偶然ではないが、次はトヨタかもと考えると日本経済の行く末も心配になる。

 最後にタイトルの種明かし。バッテリーの性能が飛躍的に向上して、スマホで発電・蓄電した電気でサンマが焼けるという意味。性能向上の予測には同意するが、例えとしてはちょっと? かも。

【連載】明日を拓くエネルギー読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 2

    フジ火9「人事の人見」は大ブーメラン?地上波単独初主演Travis Japan松田元太の“黒歴史”になる恐れ

  3. 3

    PL学園で僕が直面した壮絶すぎる「鉄の掟」…部屋では常に正座で笑顔も禁止、身も心も休まらず

  4. 4

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  5. 5

    三浦大知に続き「いきものがかり」もチケット売れないと"告白"…有名アーティストでも厳しい現状

  1. 6

    松嶋菜々子の“黒歴史”が石橋貴明セクハラ発覚で発掘される不憫…「完全にもらい事故」の二次被害

  2. 7

    伸び悩む巨人若手の尻に火をつける“劇薬”の効能…秋広優人は「停滞」、浅野翔吾は「元気なし」

  3. 8

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  4. 9

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  5. 10

    下半身醜聞の川﨑春花に新展開! 突然の復帰発表に《メジャー予選会出場への打算》と痛烈パンチ