「食は『県民性』では語れない」野瀬泰申著

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 横浜・中華街生まれの「サンマー麺」は神奈川県内では普通に、隣の静岡県でも見かけるが、富士川を渡ると消滅する。

 薬味のネギは、旧東海道上、小田原まで白ネギ、三島では青ネギになり、その境界線は箱根だという。このように、食文化は「ケンミン」単位で語ることは不可能だという著者が、境界線をテーマに、多様で複雑な日本の食文化の歴史とそれを生み出した風土についてつづる面白エッセー。

 山形県の「芋煮」の牛肉・醤油味と、豚肉・味噌味の分布は、旧山形藩、米沢藩、庄内藩の国境と重なるという。他にも、カレーや肉じゃがで関東では豚、関西では牛が使われるのはなぜか、お好み焼きの意外な発祥地、そして食の多様性を代表する雑煮まで。お馴染みの日常食の常識が覆る。

(KADOKAWA 820円+税)

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