歯磨きは“食べたら”ではなく“食べる前”が肝心
「肺炎は『口』で止められた!」米山武義著
命を奪う病気というと、がんや脳梗塞、心筋梗塞などを思い浮かべる。しかし、ひそかに増え続け日本人の死因第3位となっているのが、肺炎である。
高齢者の場合はのみ込む力の低下で起こる誤嚥性肺炎に原因があるといわれているが、歯科医である著者は食べ物の誤嚥ばかりではなく、口の中の環境に問題があると警鐘を鳴らしている。
人間の口の中には、実に600種類以上の菌がすんでいる。もちろん、大半の菌は悪さをしないが、歯垢や歯石がたまり口腔環境が悪化すると、歯周病や虫歯の原因菌ばかりが繁殖し、これらが血液中に侵入。動脈硬化や糖尿病などのリスクを高めることが分かってきた。そして、口腔内の菌が自然と肺の中に入り込み、食べ物の誤嚥をしなくても肺炎を引き起こすことも明らかになっているのだ。
口腔ケアには毎日の歯磨きのタイミングが鍵となる。一番大切なのが、朝食前の朝一番の歯磨きだ。就寝中は唾液の量が減り、口腔内で菌が増殖しやすい。歯磨き粉の味が嫌だからといって歯磨きせずに食事をしてしまうと、これらの菌が一斉に体内に入り込むことになる。
食事前に歯磨きをすると増殖した菌を減らせるだけでなく、口腔内が刺激されて唾液が出やすくなる。唾液は食べ物の消化吸収も助けるため、一石二鳥だ。本書では他にも、食事をしていないときこそ歯を磨く、抗菌薬でぶくぶくうがいをする、舌や口蓋も磨くなど、口腔ケアのヒントを紹介。肺炎は口から防ごう。
(青春出版社 1000円+税)