新生活部屋づくり本特集
「55㎡までの心地よいコンパクト暮らし」大橋史子著
気が付いたらモノが散乱し、生活感が丸出しの部屋ですてきなインテリアどころではない。掃除と片付けが苦手で、家の中が魔窟と化している……そんな家にお住まいの人は必見。必要最小限を徹底した、シンプルな生活を実践する「ミニマリスト」たちの本である。
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都市部にはタワーマンションが、郊外には建て売りの一戸建てが無秩序に造られているが、本当に理想の家に住んでいる人はどれくらいいるだろう。「大きな家に住みたい」「庭が広い一戸建てに住みたい」「自分の書斎が欲しい」と願うのは夢のまた夢である。
そこで発想の転換。狭い家でもライフスタイルを優先した結果、快適な暮らしになった13軒のお宅に取材した本がある。大橋史子著「55㎡までの心地よいコンパクト暮らし」(朝日新聞出版 1200円+税)だ。
著者はインテリアなど暮らし回りを中心に活躍するライター。賃貸も持ち家もあり、独身からカップル、4人家族まで生活形態はさまざまだが、共通項はひとつ。みな55平方メートル以下の家だ。
決して広いとはいえないが、狭いからこその美学があり、どの家もおしゃれで美しくまとまっている。
もちろんそれだけではない。収納と片付けの驚くべき極意が詰まっているのだ。
渋谷区の50平方メートルのワンルームマンションに住む夫婦のリビングには、ダブル+シングルの大きなベッドがどんと鎮座。ホテルのような感覚で、ベッドの上をくつろぐ場所にしたという。“寝室は見せない”というルールを心地よく破る。確かに、ベッドが面積を占めている割に、圧迫感がなくスッキリ。
川崎の建築家夫婦の家は、36・5平方メートル。もともと2LDKだった部屋の仕切りをなくして、ワンルームに。リビング、ダイニング、寝室、ワークスペース、キッチンと、5つのゾーンに分け、必要に応じて広げたり縮小したりするという。ゾーン分けには1個84センチ四方の木製ユニットを45個使用。これらを組み合わせて、ベンチや小上がり床、間仕切り壁、本棚などにする。
千葉の88平方メートルの家から東京・中央区の46平方メートルの家に、ダウンサイジングした夫婦も。広さ以外は気に入ったため、持っているモノを大幅に減らして引っ越したという。
取材対象者は、収納やインテリアのプロが多いので、家がおしゃれで美しいのは当たり前。それでも安価なカゴやアクリルケースを利用して、生活感を出さないコツなどは誰にでも真似できる。あとはセンスの問題か。
コンパクト暮らしの長所は、自然とモノが増えない・増やさないようになること。必要なモノ、本当に欲しいモノだけに囲まれる生活はストレスフリーだという。
また、広さにこだわらなければ、住みたいエリアに住める。場所を優先で選ぶことが可能というわけだ。長期住宅ローンで家に縛られすぎず、お金の不安も減る。
さらに狭い家は、家族との距離を近くする、掃除が楽になるなどのメリットも多い。モノの「要・不要」を見極めると、自分の人生と向き合うことができるという人もいるのだ。
それでも、あなたは広い家にこだわりますか?
「狭くても 忙しくても お金がなくてもできる ていねいなひとり暮らし」shoko著
著者は名古屋市在住の普通のOL。ミニマリストを目指し、シンプルな生活の様子をインスタグラムに投稿。フォロワー2万人に支持され、出版に至った。
6畳の1Kを広く美しく見せるには「家具は最小限で床を見せる」「見えるものは白で統一」「S字フックやクリップを使って、吊るす収納をあちこちに」などのコツがあるようだ。キッチンでは「よく使うものはあえてしまわず」「吊り棚や粘着フックを利用」「保存容器は重ねられるもの」「金曜には空っぽになる冷蔵庫」など、料理上手・片付け上手の知恵と工夫を伝授。作り置き総菜のレシピや、彼女自身のすべてのワードローブも公開しているが、無駄が一切ない。
シンプルかつ丁寧な暮らしぶりは、常に物欲に心を乱され、余計なモノに囲まれて暮らしている女性たちにとって、お手本となるに違いない。
(すばる舎リンケージ 1300円+税)
「すっきり暮らすために 持たないもの、やめたこと」主婦の友社編
大型テレビ、ベッド、ソファ、炊飯器にアイロン、傘立てにカーテン、はてはトイレの便座やフタまで……生活からなくしてみたら、むしろ部屋が片付き、すっきり暮らせるようになった、という人たちのアイデア集。
ライフスタイルや家族、ペットの動向を考えると、実は家の中には不要なモノが多いと気付かされる。インテリアの美しさだけが目的ではない。なくても困らない、掃除しやすい、代用品がある、季節限定でしか使わないなど、無駄を排除していくと、家の中はおのずと整理整頓されて、見た目もきれいになっていく。
なかには「え、それは必要では!?」と思うモノもあるが、人それぞれの生活形態と生活信条があるものだ。
21人の主婦たちが行き着いた先は、究極のミニマムな生活である。ミニマリストたちの家はみな白っぽい。家の中が白か茶か透明に統一されていくと、なぜか美しく見える。そこに極意がありそうだ。
(主婦の友社 1300円+税)
「これからは、がんばりすぎない 40歳からの暮らし替え」柳沢小実著
読売新聞の夕刊で連載をもつ女性エッセイストの著者が、家を建てたことで、生き方や暮らしを見直したという。
家の建築という一生に一度の買い物に、夜も眠れなくなるほど悩んだが、100点ではなく70点を目標に、背伸びせず・見えを張らず・普通が一番、と機能的な家を心がけたそう。
シンプルな暮らしのヒントは多岐にわたる。インテリア、食事作りのコツ、ミニマムファッションにメークアイテムの収納、趣味や習い事など、40代以上の主婦向けの情報が多い。
40代は翌日のための余力を残すことが大切だ。その日にやるべきことを書き出して、優先順位もつける。1コマ45分+休憩15分で区切り、効率よく集中するための時間割を作る著者。
地味で当たり前と思えることでも、やるかやらないか、心がけるか面倒くさがるかで大違い。奇抜さや新しさはないが、丁寧に暮らす大切さを教えてくれる。
(大和書房 1400円+税)