「馬たちよ、それでも光は無垢で」古川日出男著
福島県出身の作家は、かつて東北6県を舞台にしたメガノベルを執筆。その主人公である兄弟に「そこへ行け」と突き動かされ、東日本大震災1カ月後の被災地に足を踏み入れた。自らの内なる声に耳を澄ましながら、被災地で目にした情景をつづる手記。
震災当日、次作の取材のため京都にいた氏は、テレビの報道を注視し続け、時間の感覚が喪失する「神隠しの時間」を過ごす。その間、「どうして犠牲者は私ではないのか」との自問が続く。
15日後、顔見知りの編集者に福島行きへのサポートを依頼。話はすぐにまとまり、4月のある深夜、同行者3人とともにレンタカーで「そこを見る」ために北に向かい、作家の目で見た被災地をリアルタイムで描く。 (新潮社 400円+税)