「揺らぐ街」熊谷達也著
東日本大震災から1カ月後、文芸編集者の亜依子は上司の小暮から被災地の宮城県・仙河海市出身の作家・武山に原稿を依頼したいと相談される。武山は、7年前に新人賞を受賞してデビュー。しかし、教員試験の準備と執筆の両立が難しく、その後、一作も発表しないまま、音信も途絶えていた。
小暮は被災地出身の作家として武山を再デビューさせたいようだが、被災地を題材にすることに逡巡する亜依子には、小暮の話に乗り気になれない理由がもうひとつあった。元恋人の聡太の出身地も仙河海だったのだ。そんな中、担当する大物作家・葵が仙河海を舞台に作品を書くと言いだし、亜依子も取材に同行する。
港町・仙河海市を舞台に大震災を描き続ける作家による最新長編小説。(光文社 1600円+税)