「知の果てへの旅」マーカス・デュ・ソートイ著 冨永星訳

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 20世紀初め、当代随一の科学者・ケルビン卿は「もはや物理学が発見すべきものは何もない」と宣言。その5年後、アインシュタインが特殊相対性理論に関する論文を発表し量子物理学という新しい領域を開く。

 このように、それまで知り得ないと思われたことが新たな発見・洞察によって突然知り得るものに変わることがある。では、どんなに探究しても決して答えが得られない問いが、はたして存在するのか。

 本書は「素数の音楽」の著者が、知がどんなに発展しようと答えられない領域=知の果てを巡って探究していく、知的冒険の書である。

 冒険の始まりはサイコロ。サイコロの1から6までの目の出方をピタリと当てることができるのか。

 この古代からの難問を入り口に、カオス理論、素粒子論へと分け入り、そこからビッグバンの前の時間へと論を進め、そもそも「時間」というのは実在するのかと問いかけていく。

 物理学・数学の用語が出てくるので歯応えたっぷりだが、著者の良き導きによって、専門外でも現代科学の最前線を垣間見ることができる。(新潮社 2700円+税)

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