「特権キャリア警察官」時任兼作著
時任兼作著「特権キャリア警察官」(講談社 1500円+税)では、全国30万人の警察官を配下に置き、圧倒的な情報力と他官庁にはない強制力で社会をコントロールしている警察キャリアの実像を暴露している。
ノンキャリアの警察官は巡査の階級から始まり、その年収は360万円。しかし、東大・京大卒が圧倒的多数を占める警察キャリアは2階級上の警部補として入庁し、この時点で年収656万円と大きな差がある。そして、現場経験の有無にかかわらず、わずか1年数カ月で警部に、数年のうちには警視となり、35歳前後で警視正に昇進。この時点で年収は984万円だ。ちなみに、大多数のノンキャリアは警部補どまりである。
警察キャリアは退職後も安泰で、情報力を必要とする生保損保、鉄道、航空会社などの役員へと納まっていく。本書には氏名と役職、企業名を明らかにしながら、ここ2~3年の天下り先一覧が掲載されている。
特別待遇もさることながら、問題は警察キャリアたちが政権に媚(こび)を売り、捜査への不当な介入が行われていることだ。2015年、フリージャーナリストの女性がTBSのワシントン支局長にレイプされるという事件が起きた。警視庁高輪署は逮捕状を取ったが、執行直前に上層部から取りやめ命令が下っている。実はこの支局長、安倍首相と昵懇(じっこん)であり、麻生副総理とも親交があった人物。そして当時の警視庁刑事部長は、菅官房長官の秘書官を長く務めていた人物だったという。
他にも、警察キャリアによる捜査権の乱用や不祥事の数々がつづられる本書。官邸との異常接近による警察組織の変質にも迫っている。決してドラマの中の話ではない。