「芸は人なり、人生は笑いあり」桂歌丸著
今月2日に81歳で死去した落語家・桂歌丸が、ここ数年の高座の中からお気に入りの演目を厳選して収めた歌丸ばなしシリーズ第2弾。
収録されているのは、「後生鰻」「小間物屋政談」「ねずみ」などの名演8席。「ようこそおいでをいただきまして、どうぞごゆっくりとお遊びのほどお願い申し上げます」などの口上から始まる歌丸落語が、思う存分楽しめる。
最近の高座ということもあって、酸素吸入の管をつけ、舞台の袖から座布団まで歩くことさえ困難ななかで軽妙に始まる、枕の見事さにも舌を巻く。演目が終わるごとに「噺のはなし」という解説つき。落語の由来や、高座にかけるにあたっての歌丸ならではの工夫やエピソードなどが語られており、落語に詳しくない人にとってもわかりやすい。ページをめくるごとに、一生を懸けて磨き上げた落語の芸の素晴らしさを感じること必至。もう生では聞くことのできないあの口調や間合いが、活字の中から立ち上ってくる。
(ポプラ社 1200円+税)