「怖い間取り」松原タニシ著
前の住人が自殺や殺人、事故などで亡くなっているワケありの事故物件。松原タニシ著「恐い間取り」(二見書房 1400円+税)では、テレビの企画でさまざまな事故物件に住んできたお笑い芸人の著者が、部屋で起きた不気味なエピソードを間取り付きで紹介。
最初に住んだのは、大阪の中心地・難波からも近い10畳のワンルーム。本来の相場なら7万円は下らないが、その部屋は4万5000円と格安だった。実はこの物件、マンション全体が事故物件扱いされているというまれなケース。十数年前に4階で凶悪な殺人事件が起き、犯人は犯行後に放火までしている。その上、警察の捜査により違法建築であることも発覚。8階から10階が閉鎖されたといういわくつきの物件だった。
さらに、事件当時から貼られていたと思われるマンションの見取り図では、1階にも部屋があったことが分かるが、著者が住んだときには1階全フロアがぶち抜かれ、片面の壁一面が鏡張りの駐輪場になっていたという。そして事件当時1階に住んでいた住人は、なぜか3階に強制移住させられていた。事件のあった4階の改装ではなく、住人を転居させてまで1階の部屋を取り壊したのはなぜなのか。しかも住人たちは誰一人としてこの駐輪場を使おうとしないというから、不気味さは増すばかりだ。
著者はこのマンションでさまざまな怪現象に見舞われるが、実は事件発生以前に住んでいた住人が、マンションの前で3度もひき逃げに遭っていたという事実も発覚する。事件が起きたから怪現象が起きたわけではなく、もともと“何か”があった場所なのか。
自分の部屋は大丈夫かと、そっと周りを見回したくなる。
*「松原タニシの事故物件」はユーチューブの「日刊ゲンダイ公式チャンネル」で見られます。