“昔の人”は玄米も白菜の漬物も食べていなかった!?
2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されてから、“昔ながらの和食は健康にいい”という風潮がますます強まっている。しかし、多くの日本人が信じている和食の常識には、誤りも多い。
魚柄仁之助著「食育のウソとホント」(こぶし書房 2000円+税)では、食文化研究家の著者が、“昔ながら”や“伝統”などの言葉でごまかされた和食の真実を検証している。
食育関係の書籍では、「江戸時代に玄米食から白米食に変わったことで脚気が増えた」という記述を見かけることがある。確かに玄米の胚芽やぬかはビタミンが豊富。健康のためにと“昔ながら”の玄米食を取り入れている人も多いだろう。しかし、今日のように“完全な”玄米が食べられるようになったのは、実は衝撃式籾剥き機が開発された大正時代に入ってから。これ以前は稲の籾すり作業を土うすで行っており、籾だけでなく胚芽やぬかまで剥ぎ取られていたため、“昔ながら”の玄米はせいぜい現代の七分づき米だったという。
「白菜の漬物など日本の伝統的な発酵食品は……」という言葉もよく耳にするが、これも誤り。
確かに白菜は江戸時代末期に大陸から伝わった野菜だが、今日のものとは違い非常に硬かった。そのため、中国料理に倣って炒めたり煮て食べるのが一般的で、品種改良が進み軟らかくなったのは大正時代に入ってから。当然、漬物にされたのはその後ということで、伝統食というにはあまりにも新しいのだ。
本書では、長寿食の真実や旬のものの勘違いなども明らかにしながら、コンビニでも手に入る食材を利用した和食も紹介。健康のために和食を取り入れたいなら、“昔ながら”を妄信しないことだ。