「花まみれの淑女たち」歌川たいじ著
70代、80代の婆さんたちが共同生活しているビルがある。年金や生活保護では公団の家賃も特別養護老人ホームの費用も払えない老人たちが、ババアはババア同士で助け合おうと、一緒に働き、一緒に暮らしているビルだ。彼女たちはビルの3階と4階に暮らしている。2階は使ってないが、いずれ介護が必要になったときの設備をつくる予定。将来をきちんと考えているのだ。自分たちでお金をつくり出し、生きる道を切り開いているたくましいお婆ちゃんたちなのである。
彼女たちは探偵事務所を開いている。70代、80代の婆さんたちが探偵事務所? と思われるかもしれないが、尾行しても張り込んでも、老婆を疑う人は少なく、必ず風景に溶け込んでしまうから、実は有能な探偵たちだ。なんと盗聴器を仕掛けることも辞さない。
「メカに強くなれなくてどうすんのさ。従前の70代といっしょにすんなっての。あたしら、新たなる時代を切り開くババアだよ」と言い放つのだから、たくましい。
本書はそのお婆ちゃん軍団が、オレオレ詐欺の集団と戦う話である。それも世の不正を正すという戦いではなく、知り合いの老人が詐欺にひっかかって取られた大金を取り戻す戦いだ。きわめて個人的な戦いである。お婆ちゃん軍団がどうやって戦うのか、という興味が大きいけれど、詐欺集団に勝つことができるのか、全員無事に生還できるのか、息をのんで戦いの結果を待つのである。
(KADOKAWA 1600円+税)