「寿命の9割は『便』で決まる」中島淳著
便秘を深刻な病だと考える人は少ないだろう。しかし近年、欧米では便秘による健康リスクの研究が進んでおり、便秘の危険性が次々と明らかになっている。
欧州消化器病学会の公式学会誌によると、非便秘の人たちと比べて便秘患者の心筋梗塞にかかる率は3%、狭心症では5%高いことが明らかになっている。さらにオランダの調査では、排便時の「いきみ・怒責」がくも膜下出血のリスクを7・3倍も高めることが判明している。
便秘を甘く見てはいけない理由には、何らかの深刻な疾患が原因で便秘に陥るケースがあることも挙げられる。例えば、レビー小体型認知症とパーキンソン病だ。いずれも初期症状として表れるのが、嗅覚の異常と、便秘である。ふたつの疾患の原因に、脳の細胞にα―シヌクレインという異常物質が蓄積されることが挙げられるが、最新の研究では、α―シヌクレインは脳より先に大腸に蓄積され、便秘の原因になることが分かった。その他にも、うつ病や糖尿病と便秘の関連も明らかになっているのだ。
便秘は若い女性がなるものだと考えるのも間違い。厚生労働省の調査では、60代以降、年齢が進むにつれて便秘患者数の男女差が縮んでいき、80歳では男性の方が多くなるというデータがある。中高年男性も決して他人事ではない。
本書では、便秘のメカニズムを明らかにしながら、快便のための生活習慣を伝授。水溶性と不溶性の食物繊維をバランスよく取ることはもちろん、便秘解消に効く脂肪分の取り方、排便を助ける漢方の活用術、そして腹筋と恥骨直腸筋と肛門括約筋を鍛えてスムーズな排便を促すための運動なども紹介している。“たかが便秘”と侮ることなかれ。
(SBクリエイティブ 820円+税)