「食べたくなる本」三浦哲哉著

公開日: 更新日:

 20代前半、10カ月のフランス滞在から帰国した著者は、空港に降り立った時、日本の街は醤油と魚の匂いに包まれていると改めて気づいた。真夏の正午に出迎えにきた友人とビールを飲み、日本のビールを味わい直したような強烈な感動を覚えた。汗ばみながら飲む一杯のビールのうまさを完全に忘れていたのだ。

 それはヴィム・ヴェンダースの「ベルリン・天使の詩」の一場面と重なった。不老不死だが肉体を持たない天使が、人間の踊り子に恋をして人間になり、一杯のコーヒーを飲んで幸せそうな笑みを浮かべる。著者が成田で飲んだビールは、このコーヒーと同じ「絶対の美味」だったのだ。(元天使のコーヒー)

 映画批評・研究者が「食」を語るエッセー集。

(みすず書房 2700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」