「食べたくなる本」三浦哲哉著

公開日: 更新日:

 20代前半、10カ月のフランス滞在から帰国した著者は、空港に降り立った時、日本の街は醤油と魚の匂いに包まれていると改めて気づいた。真夏の正午に出迎えにきた友人とビールを飲み、日本のビールを味わい直したような強烈な感動を覚えた。汗ばみながら飲む一杯のビールのうまさを完全に忘れていたのだ。

 それはヴィム・ヴェンダースの「ベルリン・天使の詩」の一場面と重なった。不老不死だが肉体を持たない天使が、人間の踊り子に恋をして人間になり、一杯のコーヒーを飲んで幸せそうな笑みを浮かべる。著者が成田で飲んだビールは、このコーヒーと同じ「絶対の美味」だったのだ。(元天使のコーヒー)

 映画批評・研究者が「食」を語るエッセー集。

(みすず書房 2700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出