「都市空間の明治維新」松山恵著
明治維新の時、維新政府の拠点は実は京都だった。畿内社会の反発を恐れて、政府が東京への遷都を宣言したことは一度もなく、当初、江戸は遷都の対象から外されていた。
1864年の禁門の変以来、有力な藩は京都に拠点を置いていたが、因習のはびこる京都から遷都する必要があった。だが大坂城は鳥羽・伏見の戦いで焼け落ちたため、大坂に遷都すると皇居や官庁を新設しなければならない。ところが江戸は、江戸城外堀内側の武家地を新政府が没収していたため、遷都が可能だった。
また、新政府は、国元に戻っていた旧大名を廃藩置県直前に再上京させて地元から引き離し、定住を命じて支配下に置くという措置を取る。
新政府がどのように東京を首都とし、新旧の支配者層を入れ替えていったかに視点を当てて、明治維新を見直す。
(筑摩書房 880円+税)