次に絶滅するのはホモ属最後の一種である人間!?

公開日: 更新日:

 過去6億年の間に、地球では生物の大量絶滅が6度も起きた。中でも最大だったのが2億5000万年前のペルム紀末期で、海洋生物のおよそ96%が絶滅に至ったという。

 池田清彦著「もうすぐいなくなります」(新潮社 1300円+税)は、“絶滅”をキーワードに読み解く生物史。生物の絶滅の原因やプロセス、そして絶滅の危機にひんする生き物たちを紹介している。

 大量絶滅の原因には環境の激変が知られているが、特に大きなカタストロフィーがなくても、徐々に衰退し、絶滅に向かうという例も少なくない。例えば、長鼻類に分類されるゾウである。

 現在、アフリカゾウとアジアゾウ、そしてマルミミゾウの3種類が存在しているが、実はこれまでに見つかっている化石種(化石として発見された種)は、170種にも上る。それだけ多様化していたにもかかわらず、ゾウは大量絶滅によって3種類にまで激減しているわけだ。

 生物学者である著者は、その背景にゲノムのシステム自体の硬直があると分析している。つまり、環境の変化などがあったときに、新しい突然変異をする能力が枯渇し、環境に適応する個体を生み出せなくなる。生物は行き着くところまで行くと、遺伝的な多様性を増やすことができなくなり、進化も止まり、やがて衰退、絶滅に向かうというのだ。

 現生人類は、76億もの人口を擁して繁栄し続けているように思われるが、ホモ・サピエンス以外のヒトの種はすでに絶滅し、私たちはヒトの系統としては最後の一種である。種の寿命が尽きるか、あるいは天変地異が起きたとき、700万年前に始まったヒトの系統は、完全に絶滅する。タイトルのように、“もうすぐいなくなる”のは、人間かもしれない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情