「奨学金なんかこわくない!」栗原康著

公開日: 更新日:

 奨学金という名の借金の返済に苦しむ人は後を絶たない。もはや奨学金は、学ぶ者を奴隷にし、学問をおとしめる制度なのではないか。大学の非常勤講師にして自らも635万円の奨学金を背負っていた著者は、2015年に本書の初版版「学生に賃金を」を出版し、その不条理さを暴いた。今回、近年の奨学金を巡る制度の変化を加えた追補資料を補足して、今年2月に完全版の本書が緊急出版された。

 多くの国が高等教育を無償化する流れの中で、日本は世界第3位の経済大国になったときでもそれを自己責任として留保し続けた。そのため何度も国際人権委員会から勧告を受ける羽目になり、ようやく今年4月、大学無償化の支援制度をスタート。しかし蓋を開けてみれば条件を絞り過ぎた結果、今まで支援が受けられていた人でさえ受けられなくなるというケースが出現している。

 著者は、制度設計に教育者ではなく金融人が関わっていることや、授業料減免制度を利用する学校側に企業の息のかかった人材雇用の義務が生じていることなども指摘。新型コロナの流行で困窮する学生が急増するなか、必読の一冊だ。

(新評論 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動