「ぴりりと可楽!」吉森大祐著
櫛職人だった又五郎は、旦那衆が道楽で開いている〈噺(はなし)の会〉で高座に上がっている。ある日、幼なじみの小鉄が、あわてふためいてやってきた。上方の洒落噺が殴り込みにやってくるという。それも寄席をつくって木戸銭を取ると聞いて驚いた。江戸では風紀取り締まりが厳しく、〈噺の会〉でさえ叱責を受けているのに。噺だけで飯が食える世界があるのか。江戸で初めての寄席は江戸っ子がつくるべきだと、狂歌師の大田南畝がぶち上げる。
上方衆に対抗して、下谷稲荷で寄席を開き、又五郎は「話芸 軽口剽軽 山生亭花楽」として高座に上がった。その後、大坂渡りの「頓作軽口」を聞きに行ったというから、すごい。
後に〈三題噺〉で名をあげた三笑亭可楽の一代記。
(講談社 1600円+税)