新時代のビジネス本特集
「ビジネスの未来」山口周著
コロナ以降、従来型のビジネスモデルが苦境に立たされている今、社会は生き残りをかけて次の新しいビジネスの形を模索している。そこで今回は、新しいビジネスのあり方、リユースビジネス、ビジネスYouTube、所有から利用への転換、循環経済という5つの視点から、新時代のビジネスを説く5冊をご紹介!
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経済成長という名のゲームが、多くの国で行き場をなくしている。20世紀型ビジネスが行き詰まった今、ビジネスはどこへ向かうのか。本書は、現状認識から今後の課題を提示し、未来のビジネスの実現の鍵となる労働や消費の在り方、教育・福祉税制の具体的なアップデート法までを説く。著者は、経済低迷を嘆くよりも物質的生活基盤の整備という人類が描いたひとつの夢がほぼ完成したことを祝福しようと呼びかける。同じ夢が続いているかのように振る舞うのは欺瞞であり、終焉を受容することで意味を持たないGNPの指標から解放され、成長から成熟へとベクトルを変えて新しい社会ビジョンを再設計できるというのだ。
経済に人間性を取り戻す方策としてのベーシックインカムの導入や税制変更などの提案も興味深い。
(プレジデント社 1700円+税)
「リユース革命」木暮康雄著
メルカリの大流行からもわかるように、使われていないモノの価値を掘り起こすことに注目が集まっている。かつて「メード・イン・ジャパン」の製品がバカ売れした時代があったが、今は「ユーズド・イン・ジャパン」がブランドとして世界で流通しており、宝飾品や重機などが飛ぶように売れる。日本でつくられ、使われ、メンテナンスを受けたモノには思っている以上に価値があるのだ。
本書は、リユースのプラットフォーム「ウリドキ」を構築した著者が、日本と世界のリユース市場の歴史と今を解説しながら、今後の可能性を描いた書。日本に眠る総額37兆円もの良質な中古品を市場に出すことで、外貨を獲得でき日本は活気を取り戻すと著者は言う。
リユース業界でユニークな活動をしている企業へのインタビューも収録。
(幻冬舎 1500円+税)
「ビジネスYouTube入門」菅谷信一著
YouTubeというと娯楽のための動画と考える人が多いが、ここ数年ビジネスでの活用が増えている。再生回数を増やすことで広告収入を得てきた従来のYouTuberと異なり、ビジネスYouTuberは小さな会社や店の経営者が本業の売り上げを伸ばすツールとして動画を活用している。本書は、どんな動画をどのように活用したら、自社利益を伸ばすことが可能なのか、そのノウハウを解説。
要となるのは、「YouTube営業」という新しい営業の形だ。自社情報の動画を定期的にアップすることで、潜在的な顧客を掘り起こし、信頼関係を構築して問い合わせや決済につながる流れをつくる。業種別の成功事例やテクニック、顔出しなしの動画作成方法や、更新頻度を落とさない技などを具体的に紹介。今すぐ始めたい会社に、役立つ情報が満載だ。
(スタンダーズ 1400円+税)
「サブスクリプション」小宮紳一著
サブスクリプションとは、定額(月額・年額など)の継続的な課金により、商品やサービスを利用者に提供していくビジネスのこと。通称サブスクとも呼ばれるこのビジネス形態は、新聞や各種公共料金など、実は特別新しいものではない。しかし、近年「現代型サブスク」が次々と生まれている。
本書は、AIやIoTの進歩、さらには5Gの普及と物流の発達に支えられて新しく誕生した「現代型サブスクリプション」を紹介し、それらの成否を分ける要因や価格設定のあり方、メリット・デメリットなどについて解説している。
たとえば、メガネの田中が展開するNINAL(ニナル)は、定額でメガネ・サングラスのかけかえができる眼鏡のサブスクリプション。所有から利用へと移行する新ビジネスのヒントが見つかるかも。
(創元社 1800円+税)
「サーキュラーエコノミー」梅田靖・21世紀政策研究所編著
欧州連合(EU)が、大量生産大量消費という従来型経済から離れ、資源を循環させる経済政策に乗り出した。サーキュラーエコノミー(CE)と呼ばれるこの政策は、単なる環境政策ではない。廃棄物の発生を極力抑えながら、廃棄されやすい素材は可能な限り次の製品の素材として有効活用し、持続可能な経済の仕組みに組み替えることで、競争力のある経済開発を目指すものだ。
ものづくりのあり方から経済の仕組みを根本的に変えるこの政策によって、EUは雇用の確保と産業競争力の強化を図ろうとしているが、ものづくりを得意としてきた日本企業も、今後CEなしではEUからアジアへと拡大していく新しい経済の流れから取り残されてしまう。
本書はCEのムーブメントを解説しつつ、日本の強みや今後の変化を予測している。
(勁草書房 2000円+税)