「中古典のすすめ」斎藤美奈子著
「中古典」とは著者の造語で、「古典未満で中途半端に古いベストセラー」のこと。そのひとつが1986年の安部譲二著「塀の中の懲りない面々」である。再犯者ばかりの府中刑務所の日々をツアーガイドのように案内する。登場するのは、後に日航機ハイジャック事件で「超法規的措置」により釈放される赤軍派の城崎勉ら。著者の安部譲二が何をやらかしてここにいるのかについては書かれていない。
この本と同時期に、家田荘子の「極道の妻たち」が出ているし、映画も菅原文太主演の「仁義なき戦い」などが絶大な人気を得ていた。80年代はまだ「極道」への親近感が残っていたのだ。
ほかに有吉佐和子「恍惚の人」など、その問題提起が古びていない作品を紹介。
(紀伊國屋書店 1700円+税)