著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「櫓太鼓がきこえる」鈴村ふみ著

公開日: 更新日:

 異色の相撲小説である。なぜ異色かというと、力士が主役ではないからだ。主役は、呼び出しなのだ。しかも結びの一番で土俵に上がるような呼び出しではない。番付のいちばん下、序ノ口の取組のときに土俵に上がる呼び出しである。

 本書の主人公、篤は17歳。相撲界に入ってまだ数カ月なので、相撲経験のない新弟子や、何場所たっても強くならない力士たちが名を連ねる序ノ口の取組で力士の名を呼びあげるのが仕事である。まだ場内の観客も少ない時間帯なので、「つまーんない」と言う小さな子の声が聞こえてきたりする。

 篤の担当は序ノ口だけなので、呼び出しは30分もしないうちに終わってしまうが、それだけが呼び出しの仕事ではない。あらゆる雑用が篤を待っている。いちばん大変なのは、土俵築と呼ばれる土俵作りの作業だ。角界では本場所が行われるたびに新たな土俵を作るのだが、それが呼び出しの仕事なのだ。呼び出し総出で3日間、それはもう大変な重労働だ。紹介するときりがないのでこれ以上はやめておくが、そういう下積みの世界がディテール豊かに描かれていく。

 もちろん力士もたくさん登場する。篤の所属する朝霧部屋は6人の力士しかいない弱小なので、力士もまた下積みの人間ばかりだが、そういう男たちの哀歓を、作者は鮮やかに描きだしている。第33回の小説すばる新人賞の受賞作だ。 (集英社 1760円)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    大谷の今季投手復帰に暗雲か…ドジャース指揮官が本音ポロリ「我々は彼がDHしかできなくてもいい球団」

  3. 3

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  4. 4

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  5. 5

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  1. 6

    “下半身醜聞”川﨑春花の「復帰戦」にスポンサーはノーサンキュー? 開幕からナゾの4大会連続欠場

  2. 7

    フジテレビ「中居正広氏に巨額賠償請求」あるか? 「守秘義務解除拒否」でウソ露呈

  3. 8

    今田美桜「あんぱん」に潜む危険な兆候…「花咲舞が黙ってない」の苦い教訓は生かされるか?

  4. 9

    Kōki,『女神降臨』大苦戦も“演技”は好評! 静香ママの戦略ミスは「女優でデビューさせなかった」こと

  5. 10

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ