著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「老いた殺し屋の祈り」マルコ・マルターニ著、飯田亮介訳

公開日: 更新日:

 オッソは、2メートル近い体格とその無慈悲さから、「熊」と呼ばれてきた男である。組織の殺し屋として、ボスのロッソの片腕として活躍してきたが、しかし60歳を越え、心臓発作で倒れてからは引退を考えはじめている。そんなときに思い出すのは、40年前に生き別れた恋人と幼い娘のことで、一目だけでもいいから会いたいと思うようになる。

 で、その昔の恋人と娘がいま住んでいる町を捜しだすのだが、そこに向かう途中の列車で突然男たちに襲われる。ここからは激しいアクションの連続で、休む暇なくたたみかけてくるので、もう一気読みだ。

 オッソは世界中の町に隠れ家を持ち、そこには銃や資金が置いてある。なにもなくてもその隠れ家を定期的にまわって、異常がないことを確認しているのだが、列車内で襲われてからその隠れ家の一つに行くと、そこに3人の男たちが待ち構えている。誰にも教えていない隠れ家をどうして突き止めたのか、オッソにはわからない。オッソを邪魔するのは、組織のボスなのか、それとも敵対する組織なのか、暗中模索の戦いは続いていく。はたしてオッソは、恋人と会えるのか――という興味もあるので、ページをどんどんめくっていくのである。

 著者はイタリア映画界で活躍している人で、小説は本書が初。テンポのいい展開は、映画界の人ならではだ。アクション小説に飢えている人にはおすすめの小説だ。

 (ハーパーコリンズ・ジャパン 1300円)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 2

    阪神・西勇輝いよいよ崖っぷち…ベテランの矜持すら見せられず大炎上に藤川監督は強権発動

  3. 3

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  4. 4

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  5. 5

    阪神・藤川監督が酔っぱらって口を衝いた打倒巨人「怪気炎」→掲載自粛要請で幻に

  1. 6

    巨人・小林誠司に“再婚相手”見つかった? 阿部監督が思い描く「田中将大復活」への青写真

  2. 7

    早実初等部が慶応幼稚舎に太刀打ちできない「伝統」以外の決定的な差

  3. 8

    「夢の超特急」計画の裏で住民困惑…愛知県春日井市で田んぼ・池・井戸が突然枯れた!

  4. 9

    フジテレビを救うのは経歴ピカピカの社外取締役ではなく“営業の猛者”と呼ばれる女性プロパーか?

  5. 10

    阪神からの戦力外通告「全内幕」…四方八方から《辞めた方が身のためや》と現役続行を反対された