「偉人名言迷言事典」真山知幸著
「百歩先を見る者は狂人扱いを受け、現状のみを見る者は落伍する。十歩先を見る者のみが成功する」と言ったのは、宝塚少女歌劇団をつくった小林一三である。一三は生活者としての視点を失わず、ほんの少し先の大衆のニーズを発掘して、阪急電鉄沿線の郊外住宅の月賦販売、動物園や温泉のオープンなどを手がけ、多角経営の先駆者となった。
自殺を「自分への殺人罪」と批判した評論家の山岸外史に、太宰治は「処世術とは考えられないかなあ」と反論した。太宰は実際に自殺未遂を繰り返すことでトラブルから逃避した。太宰にとっては生きるための手段だったのだ。
偉人100人の言葉を名言とみるか迷言とみるかはあなた次第。
(笠間書院 2200円)