「大奥づとめ」永井紗耶子著
文政10年、家斉の御世、お利久は16歳で大奥に上がった。御家人の長女で、妹しかいないお利久は、本来なら婿を取り、家を継ぐのが常道だ。しかし、お利久には里に帰れぬ事情があった。奥女中になった当初、大奥での出世は、上様の御目に留まり、御手付きとなり、いずれは子を産んで側室となることだと信じていた。しかし、お利久が仕える御年寄様によると、「お清」と呼ばれる上様の御手のついていない奥女中でも、己の手腕と運、そして人脈によって出世の道が開けるという。お利久は、得意の琴の腕を生かし、御台様を芸事で慰める「御次」になる道を目指すが……。(「ひのえうまの女」)
さまざまな事情を抱えた女たちが、文書係や衣装係など大奥で居場所を得ていく江戸お仕事小説。
(新潮社 693円)