「ようこそ地獄、奇妙な地獄」星瑞穂著
極楽往生するための方法をわかりやすくまとめたのが、平安時代の僧、源信の「往生要集」だ。私たちの生きているこの世界は汚れていて、地獄道、餓鬼道など六道に分かれていて、その地獄の様相を詳しく説明している。
仏教の地獄のイメージはこれに基づいているが、平安時代には、「源氏物語」で嘘八百を並べ、読者を惑わせて地獄に落ちた紫式部を供養する「源氏供養」が行われた。その頃は、血みどろの乱世だったのだ。
また、「江談抄」には、小野小町の祖父といわれる小野篁が閻魔大王に仕える冥官を務めていたと書かれている。他に、三途の川には黄金を塗った橋が架かっている(日本霊異記)など、地獄の情報がいっぱい詰まった一冊。
(朝日新聞出版 1870円)