「捜査線上の夕映え」有栖川有栖著
東大阪市内のマンションの一室で、元ホストの奥本栄仁が殴り殺された。凶器は御影石の臥龍(がりょう)の像だ。
奥本と連絡が取れないのを不審に思った歌島冴香が8月28日、合鍵で入って、スーツケースの中の死体を発見した。そのスーツケースは冴香が奥本から借り、8月25日午後4時ごろ、奥本の瞑想(めいそう)の邪魔をしないよう、玄関に置いて帰ったのだった。その日の午後3時前まで、知人の黛美浪が奥本の部屋にいたという。
応援要請を受けた臨床犯罪学者の火村英生は、冴香がスーツケースを返しにきたタイミングが引っかかった。まるで死体を詰めるために現場に持ち込まれたように思える。冴香にはアリバイがあり、別の容疑者が浮上する。
火村シリーズの最新作。
(文藝春秋 1980円)