「世界でいちばん観られている旅 NAS DAILY」ヌサイア・“NAS”・ヤシン著 有北雅彦訳
2016年4月10日から19年1月5日まで、世界を旅しながらその体験を60秒の動画にまとめてフェイスブックに毎日投稿したプロジェクト「NAS DAILY」。本書は、世界の4000万人にフォローされ、数十億回にも及ぶ再生回数をたたき出した当プロジェクトの記録をつづった書籍版だ。
通称NAS(ナス)と呼ばれる著者は、パレスチナ系イスラエル人。ハーバード大学卒業後に就いた米国大手企業での年間12万ドルの職を捨て、1000日間.64カ国の旅に出た。彼は、米国男性の平均寿命から換算し、自分が今、人生の何%を経過したか一目でわかるTシャツを着て、毎日動画に登場した。200万トン以上のゴミが投棄されるマニラのスモーキー・マウンテンを訪れたり、マレーシアの空港から出られなくなったシリア難民を助けたりしながら、さまざまな経験を世界中の人々にシェアする。
日本では原爆が落とされた広島上空でドローンを飛ばしたほか、自殺志願者が迷い込む青木ケ原樹海も撮影している。単なる旅行記にとどめない、世界が抱える問題に率直に切り込む姿勢が心に響く。
(太郎次郎社エディタス 1980円)