「うたう生物学」本川達雄著
生き物の形というのは、ざっくり言えばみな円柱形である。外側だけでなく、中にある腸も血管も、骨も神経もみな円柱形だ。なぜか。それは、円柱形は強いからだ。
たとえば、葉っぱ。光を集める面積が広くて良いが、平たいとヘニャヘニャして姿勢が保てない。そこで、平たいものを円柱形にしてみる。すると上に物を載せてもつぶれない。だから幹と枝、そして葉脈も円柱形になっていて、姿勢を保っているのだ。
円柱形は丸いから強く、そして長い。長ければ木なら背丈が高くなり葉をたくさん付けられて光合成量が増す。動物なら足を長くすれば一歩の歩幅が増えてより速く走れるようになる。体の部分部分にはそれぞれ意味があるのだ。
ナマコ研究家にして、「ゾウの時間 ネズミの時間」で知られる著者がパーソナリティーを務める、ラジオ深夜便の人気コーナー「うたう生物学」を書籍化。生物のサイズ感や時間とエネルギーの関係を解説しながら、「通勤電車は虫かごなみ」「歳をとると1年が早く感じる理由」を紹介するほか、「ヒトデはなぜ星形か」など生物にまつわる面白コラムがズラリと並ぶ。生物学から見れば現代人の「棲息密度」や「直線的な時間のデザイン」は大きく逸脱、という指摘には改めて考えさせられる。
(集英社インターナショナル 1870円)