化石ハンター人気

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「化石の復元、承ります。」木村由莉監修

 上野の国立科学博物館(科博)で開催中の「化石ハンター」展が子どもたちに大人気。夏休みに親子で訪れたいイベントだ。

 大人気の「化石ハンター」展総合監修者がここでも「案内人」を務めている。子どものころから古生物学者になりたいという夢を抱き、今回の企画に「化石ハンター」というワードを採用したのも本人だそうだ。職名は科博の「生命進化史研究グループ」の研究主幹といかめしいが、本書は好奇心満開の面白本。

 たとえば展示の呼び物となるチベットケサイの復元。実は実物は頭骨化石と脊椎の一部などしか発見されてない。そのため他の部位はレプリカを制作する必要がある。このプロセスを、現場を直接担当した制作者たちへのインタビューとカラー写真などで再現する。ある女性スタッフは大学でデザインを勉強したあと円谷プロで怪獣スーツを作った経験もあるという。実は古生物のレプリカを制作するようになったのは偶然なんだとか。

 一方、潰れてしまった化石をコンピューターでシミュレーションし、3次元的に復元するのは専門の古生物学研究者。高性能パソコンと3Dプリンターを武器に、理論だけでは確かめられなかった疑問がレプリカによる復元作業で確信を得られたという。展覧会を見に来た中高生にさまざまな職業イメージを得やすいのも本書の特徴だろう。

 (ブックマン社 2200円)

「化石が語る サルの進化・ヒトの誕生」高井正成、中務真人著

 古生物学者は自分のことを「化石屋」と呼ぶらしい。本書は京都大の化石屋2人の共著。正確にはひとりが古生物学者、ひとりは古人類学者だが、シロウトには違いが分からんよ、と思ったら本書にはちゃんと回答がある。ショートエッセーとコラムを組み合わせながら「発掘調査って何をする?」「化石とただの石の見分け方」「類人猿は何種類?」「猿人と原人の違い」などに答えてくれる。

 たとえばネコのように夜行性の動物で目が光るのは網膜の裏側に反射膜(タペータム)があるから。逆にメガネザルは反射膜を持たない代わりに大きな眼球で光を集めるのだという。土ふまずのある動物はヒトだけとか、250万年前のシベリアにはサルが住んでいたとか、面白雑学が豊富な楽しい本である。 (丸善出版 2420円)

「恐竜まみれ 発掘現場は今日も命がけ」小林快次著

「化石ハンター」展の会場でもインタビュー動画で登場しているのが本書の著者。日本の古生物学研究の拠点のひとつ、北海道大学総合博物館で「恐竜博士」として知られる人気者だ。

 現在までに1000種類を超える学名のついた恐竜の発見地はアメリカ、カナダ、アルゼンチン、イギリス、中国、モンゴルの計6カ国。その中に日本は入っていないのだが、その割に「異常ともいえるほど恐竜ファンが多い」のだそうだ。著者の想像ではゴジラやウルトラマンの怪獣と恐竜が一緒くたになっているのではないかという。しかし近年、フクイラプトルやフクイサウルス、むかわ竜など日本でも恐竜が発掘されるにつれ本格的な人気が一気に高まったそうだ。

 欧米人に比べて小柄な著者は目線の低さで化石を発見するのが得意。他人とは同じ場所を探さないこともあって「ファルコン・アイ」(ハヤブサの目)と異名を取る化石ハンターだ。エピソード主体のエッセーで読みやすく楽しい。3年前に出た単行本の文庫化で入手しやすいのもうれしい。 (新潮社 781円)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

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