「金庫番の娘」伊兼源太郎著
32歳の花織は、約10年勤務した会社を辞め、父親のコネで与党の大物代議士・久富の秘書になる。幼い頃から久富の秘書を務める父親の姿を見て育ち、政治の世界を嫌悪してきた花織にとっては苦渋の決断だった。
そんな世界にあえて飛び込んだ理由は誰にも打ち明けるわけにはいかない。まだ右も左も分からない花織だが、ある日、久富に財務秘書、つまり事務所の金庫番になって欲しいと言われる。知らなかったが花織の父親も長年、久富の金庫番を務めてきたらしい。
返事を躊躇(ちゅうちょ)した花織だが、数日後、久富がそんなことを言い出した理由が分かった。現職総理大臣に対抗し、久富が党の総裁選に立候補を表明したのだ。
汚れた政治の世界に新米秘書が風穴をあける政治エンターテインメント。
(講談社 946円)