「ルポ 虐待サバイバー」植原亮太著
精神保健福祉士として生活保護業務に携わってきた著者によると、保護を受けている人には、虐待を受けてきた人が多く、その心の傷が自立を阻んでいるという。被虐待者の声に耳を傾け、虐待問題の真の解決への糸口を探るルポルタージュ。
実例を挙げながら、行政による対応の多くが、虐待を受けてきた人のことを想定していないと指摘。さらに、あらゆる虐待を受けて解離性障害となった女性の例などを挙げ、精神科医療でさえ彼らの内実に添った治療がなされているとは言い難い現実を明らかにする。
一方で、親子間で起きた問題は愛着関係がより豊かに促進されることで解決されると思い込んでしまっている「支援者側の心理的問題」にも触れながら、被虐待者たちにとって真の回復とは何かを考える。 (集英社 1045円)